2017年09月13日

暁鐘 十一

小説「新・人間革命」〉 暁鐘 十一

 ソフィア大学は、聖クリメント・オフリドスキ通りにあった。青い屋根をもつ重厚な石造建築の校舎が伝統を感じさせた。
 山本伸一への名誉学術称号授与の式場となった講堂は、高い天井に彫刻が施され、荘厳な雰囲気に包まれていた。
 式典では、I・アポストロワ哲学部長が推挙の辞を述べたあと、I・ディミトロフ総長が立ち、古代ブルガリア語で認められた名誉博士の学位記を伸一に手渡し、握手を交わした。集っていた学部長や教授など、約百人の参加者から、盛んな拍手が起こった。
 引き続いて、「東西融合の緑野を求めて」と題する伸一の講演となった。
 彼は、ブルガリアは、地理的にも、歴史的にも、精神面においても、“西”と“東”とが交わり、拮抗してきた大地であり、西洋文明と東洋文明を融合・昇華させ、新たな人類社会を構築していくカギともいうべき可能性があることを訴えた。
 そして、ブルガリア正教など、東方正教における「神」と「人間」の距離について論じ、東方正教では「神」と「人間」との間に介在するものは、いたって少なく、両者の距離は近いとの洞察を語った。
 さらに、ブルガリアの革命詩人フリスト・ボテフの詩「わが祈り」の一節をあげた。
 「おお わたしの神よ 正しき神よ!
  それは 天の上に在す神ではなく
  わたしの中に在す神なのです
  わたしの心と魂の中の神なのです」(注)
 ここでは、既に「神」は「人間」の心の中にあり、民衆との隔たりはない。
 伸一は、わが胸中に「神」を見る、その考え方は、「神」が天上の高みから、人間の生命の奥深く降り来ることによって、人びとをあらゆる権威の呪縛から解き放とうとするかのようであると所感を述べ、ボテフの訴える「神」について言及していった。
 「それは、虐げられた農民、民衆に、燦々と降り注ぐ陽光にも似た、人類愛の叫びであります」
 小説『新・人間革命』の引用文献
 注 『フリスト・ボテフ詩集』真木三三子訳、恒文社
posted by ハジャケン at 10:05| 山梨 ☁| 新・人間革命 30-4暁鐘 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする